自分の菩提寺(ぼだいじ)は真言宗という方でも、一般的には日々の暮らしで仏教の儀式を行うことやお経を唱える方はそう多くありません。
たいていが毎朝、仏壇に手を合わせる、お線香をあげる、ご飯やお水を供えるくらいではないでしょうか。
願い事がある際や不安を払いたい時だけ手を合わせる方も少なくありません。
この記事では本来あるべき真言宗信徒が日々の勤行(ごんぎょう)で行うことを解説していきます。
真言宗信徒の勤行の始め方
真言宗信徒の日々の勤行は、ご自身が属する門派において発行されている経本に則って行うことが基本です。
経本は総本山などにお参りした際に購入することや菩提寺に相談すれば手に入れることができます。
真言宗には門派が多く、それぞれ少しずつ違いがありますが、ここでは最も多い、高野山真言宗の仏前勤行次第(ぶつぜんごんぎょうしだい)について見ていきましょう。
高野山真言宗の勤行のやり方
15のステップに分けられます。
細かいようですが、毎日行うようになれば、自然と身につきスラスラと進められるようになるでしょう。
場所はお仏壇で行います。
勤行前にお仏壇をお掃除し、お花や飲食物などのお供えをあげましょう。
1.合掌礼拝(がっしょうらいはい)
両手を清め、口をすすいでから始めることが礼儀です。
姿勢を正し、心を穏やかにして、左手に念珠(ねんじゅ)を掛け、両手を合わせてます。
軽く頭を下げて仏様に合掌礼拝してください。
2.懺悔(ざんげ)
日々の行いの中で生じた、身・口・意に基づく罪過(ざいか)を懺悔します。
3.三帰(さんき)
仏・法・僧の三宝に帰依することを誓います。
4 三竟(さんきょう)
生涯、三宝に帰依し続けることを誓いましょう。
5 十善戒(じゅうぜんかい)
十善戒を心がけて生活することを誓います。
十善戒は以下の10つの心得です。
不殺生(ふせっしょう):むやみに生き物を傷つけないようにしましょう。
不偸盗(ふちゅうとう):物を盗んではいけません。
不邪婬(ふじゃいん):男女の道を乱さないようにしましょう。
不妄語(ふもうご):嘘をついてはいけません。
不綺語(ふきご):無意味なお喋りは慎みましょう。
不悪口(ふあっく):乱暴な言葉を使ってはいけません。
不両舌(ふりょうぜつ):筋の通らないことを言うのはやめましょう。
不慳貪(ふけんどん):欲深いことをしないよう心がけます。
不瞋恚(ふしんに):耐え忍び、怒らない心を持ちましょう。
不邪見(ふじゃけん):間違った考え方をしてはいけません。
6 発菩提心(ほつぼだいしん)
悟りを求める心を起こすことです。
7 三摩耶戒(さんまやかい)
真言宗のご本尊である、大日如来(だいにちにょらい)と一体になることを誓います。
8 開経偈(かいきょうげ)
大日如来の教えに出合えた幸せを喜びましょう。
9 般若心経(はんにゃしんぎょう)
修行の成就を説く般若心経のお経を唱えます。
10 本尊真言(ほんぞんしんごん)
経本に従い、本尊の真言を唱えてください。
11 十三仏真言(じゅうさんぶつしんごん)
不動明王(ふどうみょうおう)はじめ、13の仏様の真言を唱えましょう。
12 光明真言(こうみょうしんごん)
光明真言を唱えることで、仏様の加護を頂戴します。
真言宗の中でも重要な真言となる23文字の短いお経です。
一心に唱えることで、あらゆる厄が取り除かれると言われるほどのパワーを有します。
13 御宝号(ごほうごう)
「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と唱えましょう。
14 祈願文(きがんもん)
修行の成就と、世界の平和と繁栄を仏様に祈ってください。
15 回向(えこう)
読経の功徳により、皆ともに成仏できるよう願ってください。
まとめ
真言宗信徒の勤行は、各門派の経本に基づいて行われます。
細かな流れがありますが、どれも意味のあるプロセスです。
一つひとつの勤行の意味を理解して、継続的に行っていくことで、経本を見なくてもできるようになっていきます。