「ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてー」というお経を、葬儀や法要などの席で聞いたことはないでしょうか。
これは般若心経(はんにゃしんぎょう)の一節です。
般若心経は般若宗といった特定の宗派があるわけではなく、さまざまな宗派において用いられているお経の一つです。
般若心経の歴史や特徴を見ていきましょう。
般若心経とは
般若心経はすべての人が悟りの境地にたどり着くための教えを説く大乗仏教(だいじょうぶっきょう)の精神を示した、代表的な経典の一つです。
大乗経典の中でも最も早くから成立し、大乗仏教の発展に貢献しました。
般若経は般若経典群の総称で、膨大な量の経典があります。
その中の一つである「大般若経」は600巻ありますが、「西遊記」のモデルと言われる三蔵法師玄奘がインドから持ち帰り、サンスクリット語から漢訳しました。
「大般若経」の根本思想を262文字に凝縮したものが、さまざまな葬儀や法要をはじめ、朝のお勤めとして唱えている方も多い般若心経です。
正式には「摩訶般若波羅蜜多心経(まかはんにゃはらみったしんぎょう)」という名称で、日本語でいうと、大いなる智慧の完成された精髄を示した経典という意味合いです。
空の思想
262文字に要約された般若心経には、般若経のメインテーマとなる空(くう)の思想が簡潔かつ明解に説かれています。
空は、もともとの意味は、からっぽという意味ですが、般若心経では、あらゆるものには定まった実体がないことを意味しています。
般若心経の一節にある「色即是空(しきそくぜくう)」、「諸法空相(ぜしょほうくうそう)」の意味するところは、色(=目に見える物体)や諸法(すべての存在)には、永遠に変わらない実体などはない(空である)ということです。
空とありのままの姿
般若心経で説かれる空とは、からっぽという意味を持たず、有に対する無という意味でもありません。
ありとあらゆるものには実体がないという真理を悟ることで、物事に一切執着することなく、ありのままの姿を捉えられるようになれとの教えが説かれています。
たとえば、人が幸せを感じた場合や豊かだと感じても、それ相対的なものです。
自分の外側にあるモノサシを用いて、勝手に思い込んでいるにすぎません。
般若心経では、外側のモノサシや相対評価をするのではなく、ありのままの姿を見つめることが大切であると説いています。
まとめ
般若心経は膨大にある般若経典群の一部である大般若経を三蔵法師玄奘が訳し、262文字に要約されたものです。
大乗仏教が発展するのに大きな役割を果たし、短い呪文の中で、空の思想を明解に説いています。